クジ引き
「本当に、何も思い出さない?」


「……ごめん」


朝日は嘘をついているようには思えない。


過去の記憶は本当に全部消されているようだ。


「あたし、考えてたの。どうしてあたしや朝日が選ばれたのかなって。どう考えてもおかしいでしょ? 何もないあたしたちに突然こんな事起こるはずがない。

でもね……あたしたちに共通点があるとしたらそれは……殺人犯だってことだけなんだよ」


あたしの言葉に、部屋を流れている空気が止まった。


朝日が目を見開き、無言のままあたしを見る。


「被害者たちが復讐しているのかもしれない……」


あたしは静かにそう言ったのだった。
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