囚われ姫と金と銀の王子
その時だった。

後ろから声を掛けられる。




「そんなに急いで、どちらへ?」



感情のない冷たい声に背筋がひやりとし、足が止まった。

息が上がるような走り方をしていた訳でもないのに、息が荒く激しさを増す。



鼻で呼吸をするには苦しくて、口で息を吐きながら、私はゆっくりと後ろを振り向いた。


「何かおありですの?そんなに息を切らして」


振り向いた先には、扇で口元を隠してはいるが、明らかにその後ろで微笑みを浮かべている、一人の女。





―――しかし、その瞳は憎悪で満ち溢れていた。
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