囚われ姫と金と銀の王子

周りは、怒号と悲鳴が響き渡っていた。

逃げ惑う者もいた、その光景に茫然と立ち尽くしている者もいた。



「滅んでしまえ、こんな国なんか!私を選ばない王子なんてこの世にいらない!選ばれた女なんていらない!みんな死んでしまえ!!」


暴れ、なおも刺そうとナイフを振りかざすエリスを、近くにいた騎士達が囲って取り押さえる。

取り押さえられてもなお、エリスはまだ何かを叫んでいた。

けれど、私にはその声がもう遠くで聞こえているように感じて、何を言っているのか分からない。



身体も動かない。

意識もどんどんと薄れていく。




「ソフィア!ソフィア!」


崩れ落ちた私の身体を抱きかかえ、殿下が私に向かって必死に名を叫んでいた。


それに応えたいのに、声を出すだけの力すら入らない。


霞む瞳に映るのは、見た事のない殿下の悲痛な表情だった。


< 176 / 228 >

この作品をシェア

pagetop