マーガレット
「……さん、お客さん。着きましたよ」
「あ……すいません」
運転手に何度も呼びかけられ我に返ると、慌ててカバンから財布を取り出した
イブだからっていつもより多くお金を持ってきてて良かった、なんて思う
タクシーを降りると緊急外来の入口から中に入る
慣れないブーツを履いた脚で小走りすると手術室の前に着いた
扉の上には赤く光る手術中のランプ
薄暗い廊下の中で異様なほど光っている
この中に、拓海が……?
未だに信じられない出来事に、夢でも見てるんじゃないかと思う
「沙奈ちゃん!」
何も考えずに立ち竦んでいると、連絡を受けたであろう拓海の両親もやって来た
拓海のお母さんである美和子さんは、青ざめた顔をしている
お父さんの浩介さんも、状況を理解出来ていないという感じだ
「拓海はあの中に?」
「…………はい」
消え入りそうな声で美和子さんが尋ねてくる
私だって拓海が重症だということを嘘なんだと思いたい