マーガレット

手に握っていた汗が乾いて、すっかり冷たくなってしまった頃


手術中の赤いランプが消え、中から拓海を手術したと思われる医者が出てきた




「……っ、先生!た、拓海は!?」


掴みかかる勢いで医者に縋りつく美和子さん


誰もが拓海の安否を気にする中、医者は静かに口をつぐんだままだった



なんで何も言わないの?


『手術は成功しました』って自信満々に答えてよ


この病院は医者のスペシャリストが集まるんでしょ?


それなのに、なんで……




カチカチと時を刻む秒針の音、遠くで聞こえる街のざわめき


点いては消える蛍光灯、風が当たり鈍い音を立てる窓ガラス



普段だったら何とも思わないはずのものが、今はすごく憎らしい


こんなにも苦しくて、死んだ方がマシなくらい辛いのに


外の世界では日常が溢れてる



まるで私たちだけが異空間に取り残されたみたいだった




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