逆光





大谷が言いたくても言えないこと。


それはきっと諜報部で聞いた何かだろう。
寺田総馬に関する、何らかのマイナス情報。

その、水面下で起きている何かを調べるためにここ数ヶ月和泉は新聞を買い集めていた。


だが、和泉以外にも気付いている人は多いらしく、最近はチラホラと各地で動きがある。
寺田総馬がこのことに気付くのも時間の問題だろう。





「ナムト戦争の終結秒読みか!?」

新聞の見出しをぼんやりと思い出す。

寺田総馬はきっと気づく。
気付いて、その後が問題だ。

結果が分かるのは数十年後だ。

その前に、寺田総馬と別れるべきか。

何度も思案した内容。
今回も結論はでないまま、和泉は黙って寺田総馬の背中に手を回した。

黙って抱きしめ返してくれる腕の暖かさが、今は邪魔だった。





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