逆光






和泉の視線に気付いたのか、寺田総馬が口を開く。


「和泉がここ最近ナムト国のことをずっと調べてたのは、翔さんのためだったんだな」

「はい?」

「数ヶ月ぐらいずっと新聞買い続けてるじゃないか」


寺田総馬はそう言って和泉の前髪をかきあげる。
撫でられたおでこがくすぐったい。

「そうです」と言いながら和泉は寺田総馬の肩に顔を寄せる。
「今日は和泉から寄ってきてくれるなぁ」とへにゃっと笑った寺田総馬の声。

まだ、彼は気付いていない。


『総馬と別れたほうがいいかも』


何度問いただしても、大谷はその理由を教えてはくれなかった。
寺田総馬も話してみたらしいが、なしのつぶてだったらしい。

だから、和泉は自分で調べることにしたのだ。

大谷は諜報部にいる。
戦争で勝敗を決めるのは情報だ。
だから、国は優秀な人材を諜報部に入れようとする。

諜報部では国民が知らないような取引を他国と行い、秘密裏に情報戦を日々繰り広げているらしい。




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