逆光





机上のグラスを睨んでいたら、ランチが運ばれてきた。
ホカホカと湯気の立つ鍋。
美味しそうな匂いに思わず意識がそちらへ行く。

鼻をくすぐる出汁の匂い。
だが、和泉の胸のあたりはなんだかモヤモヤしていた。

というか、少なからず総馬に対しての怒りがあった。
けれど何故怒っているのか、というのは自分でも分からなかった。

だって、何の問題もないはずなのだ。
離婚すればお金がもらえる。
離婚後の生活だって保障しようとしてくれる。

では、何故こんなに怒りが湧いてくるのか。
相談もせずに、勝手に決められたことに怒っているのだろうか。
というか、再婚はそもそも和泉の問題だ。
総馬に決められることじゃない。

ふと、そこで気になった。
総馬は誰と再婚するのだろう、と。


「島さんが総馬さんの再婚相手ですか?」

「違います」

ポロリと出た質問は、一瞬ではね返された。


「ていうか、イヤです」


イヤなのか。
和泉は意外な気がして島さんを見つめた。

数年前は総馬にふさわしくないと突撃をかました経歴のある彼女が。
まぁ、普通の女心なら始めから再婚相手として扱われるのはイヤだろう。
島さんの心境はそれだけではないようだったが。





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