逆光






「総馬、この前言ってたゲーム全クリしたから今度貸してやるよ。」
「駅前のあのラーメン屋、また行こうよ。」
「うわ、総馬お前和泉さんと知り合いなの!?」


食事をしている間という短い時間で寺田総馬は
顔が広いということが分かった。
入れ替わり立ち替わり男女色んな学年の人たちが総馬に声をかけていく。

和泉はそんな彼の様子をぼんやりと見つめながらモグモグとアボカドを食べていた。


「人気者ですね。」

「そうかぁ?」


ニコニコと眩しいほどの笑顔を見せる総馬。

たくさんの人に囲まれる総馬は、いつも一人でいる和泉とは間逆の人だな、と思った。
よくよく考えてみれば和泉が友達と呼べる人など翔しかいないのではないか。
知り合いと言える人はいるが、それだって殆どが体良く使える男たちだ。

改めて私は人徳がないなぁ、と和泉は考える。

だからといって今から愛想を振りまくつもりもないし、自分の性格を改めるつもりもない。

ぶっちゃけて言えば、和泉はこの時点で寺田総馬に関してはもう興味をなくしていた。

寺田総馬はいつも笑っている。
いつも笑っている人間は、嫌いだ。
どこがどう、とかいうよりも、信用出来ない。







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