逆光
手紙を出した四日後、家のポストに一枚の紙が入っていた。
ヴィクルスーパーの安売りのチラシだ。
始めはイタズラかと思ったが、裏面にボールペンで文字が書いてあった。
クセのある右上がりの字。
翔だ。
直感で分かった。
『遠い』と、その二文字だけ書かれていた。
「遠い?和泉はどんな手紙を書いたんだ?」
ジュージューパチパチと音を響かせ目玉焼きを焼きながら、総馬が尋ねてきた。
総馬は料理の練習中だ。
これからは和泉がいないのだから、一人でご飯を用意しなくてはならないのだ。
「これから旅行に行くと書いたんです」
「旅行?」
「一人旅するつもりなんです。マハ街とかクロックビーチとかルニー港に行きたくて」