無機質な恋模様
私をこんな気持ちにさせるのは、てっちゃんくらいだよ。


次にまた使うのは私かもしれないけれど、とりあえずてっちゃんをクリアな状態にした後、別れの挨拶を述べた。


「それじゃあまたね。お休みなさい」
『うん、おやすみ…』


すぐにてっちゃんはパタリ、と眠りに落ちる。


「ふふ…」


思わず笑いが漏れた。

ホント、この子と一緒にいると癒されるんだよな~。

何しろこのフォルムが良いよね。

色黒でカチッとしててビジネスライクな子が多い中、てっちゃんは色白であちこちポップな色が使われており、丸くて従来より小型化されているから、ちんまりしていてとっても可愛いらしい。


だけど…。


今はとても初々しく、幼く感じられるけれど、このビジュアルがスタンダードになり、そして彼自身も色々と経験を積んで行ったら、ベテランとしての風格が出てくるのだろうな、と思う。

その頃にはきっともう、あんな風に、私に甘えてくれることもないだろう。

ちょっぴり切ない気持ちになりながら、私は彼に向かって囁いた。


「それでも私の一番はてっちゃんだから。これからもどうかよろしくね」


もう聞こえてはいないだろうけど…。

そして、まるで人間の体温のような、まろやかな熱を発する彼を両手で持ち上げると、胸元に寄せて、ギュッと、強く、抱き締めたのだった。
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