ずっとお前を待ってるから
久しぶりの君は
「また会えるっての」

「本当に?」

「絶対、またお前のとこに帰ってくるって!」

幼かった私は好きだった彼との別れが相当心にきたようでご飯を食べない日が続き入院までした事だってあった、と後に母は言ってた。

「柚那(ゆずな)〜、ご飯できたわよ〜」

「…はぁい…」

気だるい体を起こしふと昔の思い出を振り返る。懐かしい昔の彼の顔はあどけなさを残したまま記憶に残っていた。小学の時に転校してしまった彼に続き私も父の転勤もあり隣の県の中学、高校と進学。

「そういえば、新しいお隣さんにね柚那と同じ学校に転校してくる子供がいるって噂を向かいの白井さんが言ってのよ〜?」

「ふぅん…こんな時期に転校生なんて珍しいね」

「行ってくる」

「あ、お父さん行ってらっしゃい」

ごはんを口に運びつつ母と会話していると無口な父は鞄を持ち玄関に向かう。その後ろを母が跡を追う。笑顔が絶えない母は父に行ってらっしゃいのキスをする。毎日恒例で見るに絶えないなんて思った事なんて一度もないがこちらが少し恥ずかしい。

「私も、行ってきまーす」

「気を付けるのよ〜?」

玄関先から手を振る母に振り返す。何気ない幸せな家族だとつくづく感じる。

「おっはよ〜!」

「おはよ、海(うみ)」

中学校の時からずっと一緒の友人の静白海(しずしろうみ)とは高校も同じになり家も近く朝は基本的に海と登校する事が多い。

「ねぇねぇっ!?聞いた?」

「…転校生の話し?」

「そうそう!すっごく気にならない?」

「うーん…お母さんも聞いたって言ってたけど…」

「男の子らしいよ!」

「情報が早いね…」

楽しそうに転校生の事を話す海にふと夢に出てきた幼なじみを思い出した。

「緑下冬二…」

「?…聞いた事ない名前ね」

「え?私、今何か言った?」

「緑下…冬二って、はっきり言ったわよ?」

頭に浮かんだ人物の名前を思わず言ってしまった。不思議そうにこちらを見つめる。が何かを思い出したようにニヤリと笑った。
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