イケメン部長と(仮)新婚ライフ!?
「結婚もいいって思ってもらえましたか?」


少しは成果があっただろうかと、あまり期待はしていないけれど試しに聞いてみた。電話の向こうで、小さく息が吐かれる。


『……そうだな』

「えっ!?」


予想外の好意的な返答に、私は裏返った声を上げ、ピンと背筋を伸ばした。が、しかし。


『って言うほど俺は単純じゃねーぞ』


意地悪な言葉が後にくっついてきた。

あっさりと騙されそうになってしまった自分は、本当に単純だなと肩を落とす。


「ですよね……そんな簡単じゃないですよね……」

『でも、一葉の気持ちは伝わってる』


落胆したものの、彼の優しげな声が耳に届いて、ゆっくり顔を上げた。

気持ちは伝わってる……なんて言われると、私が部長のことを好きみたいじゃないですか。


…………ん、好き? 私が、部長のことを?


『……おい。寝たのか?』

「え、あ、起きてますよ!」


無愛想な声がして、私は慌てて返事をした。

疑惑が降って湧いたせいで、急に黙り込んでしまった。でも、私が本当に部長のことを好きだなんて、そんなことあるわけ……

あるわけ……ない、と言い切れない自分がいることに、たった今気付く。


『次はどんな手で来るか、楽しみにしてるよ』


動揺し始める私の鼓膜を、ふっと笑う余裕の声が揺さ振った。


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