イケメン部長と(仮)新婚ライフ!?
こんなへべれけな私に付き合ってくれる早乙女くんは、本当にいい人だなぁと感心しながら、何もためらわずに手を重ねた。

トイレは宴会場から少し離れた、廊下の一番奥にある。その前まで早乙女くんに連れていってもらい、用を済ませて戻ると、彼はまだ廊下の壁に背中をもたれて待っていてくれた。


「ありがとね~間に合いましたぁ」


片手を上げて言う自分に、何の報告だよとつっこみたくなる。早乙女くんは、「それはなによりで」と言って、クスクスと笑った。

宴会場に戻ろうと、ふたりで歩き出そうとした時、ふわふわした感覚がする私の足がもつれた。


「ひゃぁ!?」

「……っと」


転ぶ!と思ったのは一瞬で、すぐに身体が支えられる。

背中と、両腕を閉じ込めるようにして抱き抱えられ、耳のすぐ上から「大丈夫?」と声がした。


──わ、うわ……私、早乙女くんの腕の中に!

アクシデントとは言え、男の人に抱きしめられた経験なんてあまりない私には、何かの装置が発動されたみたいに、急に心臓がドキドキし始める。


「危ないな。しっかりしてください、お姉さん」

「ごごごごめん!!」


優しい口調で茶化す彼から、慌てて飛びのこうとするものの、なぜかギュッと力が込められて動けない。

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