イケメン部長と(仮)新婚ライフ!?
早乙女くんは、苦しそうな顔で無理やり微笑みを作ってみせる。


「部長のことを好きだっていうのは本当だよね。それは一葉ちゃんを見てればよくわかる」


そんなにバレバレなのかと思うと、恥ずかしくて縮こまってしまう。

けれどそんなことよりも、私の腕を掴む彼の手の力が強くなり、気まずさが襲ってくる。


「でも、もし部長の気持ちは同じじゃないとしたら……僕は黙っていられない」

「早乙女く──」


急に引き寄せられ、彼の腕の中に閉じ込められて。


「奪いたい。君を」


強く願うような声が耳元で響き、心臓がギュッと掴まれたように苦しくなった。

心が、掻き乱される。強い風に吹かれた木のように、ざわざわと大きく揺れる。

けれど、私はわかっているんだ。強く根付いた気持ちは、嵐が来ても簡単には動かないと。


「……ごめん……」


私は俯いてぽつりとこぼすと、彼の胸を押す。

それは、気持ちを受け止められないという意思表示だと理解したのか、彼はゆっくりと腕を解いた。


その直後、ドアが開かれて他部署の社員が入ってくる。何かあったと悟られないよう、私はさっと早乙女くんから身体を背け、再び用紙に手を伸ばした。

しかし。


「……まだ、諦めたわけじゃないから」


したたかさを滲ませる囁き声を残して、カタログを手にした彼は離れていく。その後ろ姿を、私は複雑な心境で見送った。


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