イケメン部長と(仮)新婚ライフ!?
部屋の前に送り届けて気持ちを聞くと、彼女は「違いますよ!」と否定したが、それが本心かはわからない。

ひとまず冷静に考えるためにも、今日のところは帰ろう。そう思った矢先、一葉は思いもよらないことを言い出した。


「私は、終わりにしたくないです。こんなのいけないってわかってるけど……やっぱり諦められない」

「一葉……」


“諦められない”って、どういうことだ?

彼女が自分自身に対して言っているようにも聞こえる、その言葉の意味をかみ砕こうとする、が……。

俺の腕をぎゅっと掴む手、酔いが残っている薄紅色の頬、見上げる潤んだ瞳。

いつもの一葉とは違う、ドキリとさせられる表情のせいで、わずかに残っていた余裕が霧のように消えていく。


「部長……落ちてください、私に」


震える声で懇願された瞬間、踏み続けていたブレーキを離したかのように、俺の心は坂道を一気に転がり出す。

……もう落ちてるんだよ。きっと、ずっと前から。

奪った鍵で勝手にドアを開けると、玄関の中に彼女を引き込み、唇を塞いだ。こんなに心臓が騒ぐのはいつぶりだろう──。


柔らかなそれの味をしっかりと感じる前に離れる。

暗がりでも、今一葉がどんな顔をしているのかは想像がついた。俺も、きっと余裕のないザマになってんだろうな。

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