イケメン部長と(仮)新婚ライフ!?
結婚していないくせに知ったかぶったが、これは俺の理想だ。

もし悲しい思いをさせてしまったら、その何倍も幸せを与えてやる。そうすれば、きっとまたやり直せるはず。兄貴達のように。

それで絆が深まっていくのなら──結婚も悪くない。


そんなふうに俺の考えを変えてくれた彼女を想いながら、もう話を切り上げようと腰を上げた。

応接スペースを出ようとすると、まだ座ったままの早乙女が口を開く。


「……部長は何でも持ってるから、そんなに自信があるんでしょうね」


テーブルを見下ろしたままぽつりと呟かれたその言葉は、嫌味でも、敵対心があるでもなく、ただ本音がこぼれただけのように聞こえた。

そして、ふと思う。もしかしたら早乙女は、兄貴に対抗していた昔の俺と似ているのかもしれない、と。


「……こんな俺が羨ましいのか?」


後ろを振り向き、淡々と問い掛けてみた。

図星を指されたように、はっとして顔を上げた彼に、俺は不敵な笑みを向ける。


「欲しいものがあればやるよ。ただし、一葉以外」


意地の悪い一言を投げ、ぽかんとする早乙女を残してその場を後にした。


まだ俺のものじゃないってのに……自分の独占欲の強さには改めて呆れる。

だが、本当に大切なものだけは渡す気はない。

多少強引でも、望むものは手に入れる──それが俺のやり方だ。




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