イケメン部長と(仮)新婚ライフ!?
少し暑さが和らいできた今日も、婿のことを気にする余裕はなく。慌ただしく営業マンが出入りするオフィスで、私はいつものようにパソコンと電話を相手に仕事している。

十月の頭には、スマイルメイキングで扱っている商品を取引先に紹介する展示会が開かれる。普段の仕事に加えてその準備もあるため、最近は少し忙しい。

それでもやりがいはあって、せっせとその業務をこなしていた。


もうすぐ午後三時になろうかという頃、取引先へ提示する資料を作るため、商品のカタログが必要になった。
主なものは営業部のオフィスにもあるものの、あまり使われないものは一階の資料室に置かれている。

そこへ向かおうとして階段を下りきった時、正面の入口のドアが開かれた。必然的に顔を合わせることになったその人を見て、私はヒュッと息を呑む。

マロン色に輝く長い巻き髪の、今日も迫力のある美人さん……久々に会った本庄さんも、私に気付いて目を丸くしている。


「あ、お、お疲れ様です!」


とりあえず挨拶!と思い、ガバッと頭を下げた。

そして恐る恐る顔を上げると、マネキンのような無表情で私を見下ろす本庄さんがいる。ギョッとして肩をすくめる私をじっと見つめたまま、彼女の紅い唇が動く。

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