記念日に愛の言葉を
*冬*

定時五分前になると、時計を見ながら机の上を片付け始める人がいる。特に何かしらイベントの日は、予定アリの人のソワソワ具合は手に取るように分かる。

私だって今日はキッチリ定時で終わらせて帰ろうと朝から配分を考えて仕事をしていた。
それなのに、後輩のミスの尻拭いに追われていて自分の仕事を後回しにした結果、こんな時間に資料作成をする羽目になった。
本当にツイてない。イライラしながらパソコン入力していたら、私の机を人差し指でトントンと叩かれた。
手を止め、誰だろう?と思い見上げると危うく舌打ちしそうになった。

「大島、資料は出来たのか?」

今の状況を見れば出来てるかどうかなんて分かると思うんだけど。

「すみません。まだ出来てません」

「はぁ?出来てないってどういうことだよ。明日の昼に企画会議があるんだぞ」

私が謝罪すると、眉間にシワを寄せて声を荒らげる堀田部長。
そんなに大声を出さなくても分かってますよ。
ていうか、出来てないのはあんたが私にバカ後輩のミスをフォローしてやれって言ったからでしょ。
ちょっと可愛い子がミスしたからってすぐ私に振るなと言いたいところだけど、ここはグッと堪える。
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