ゆえん


当時の菜穂は、とても優しくて聡明で、私はお姉さんが出来たみたいで本当に嬉しかった。

菜穂と一緒に家に帰ったりもした。

彼女はいつも私の話を聞いてくれて、アドバイスもしてくれる。

年が離れていても、何でも話せる存在だった。



その図書館で私は修ちゃんに出会った。

修ちゃんこと、今内修二は二十一歳の大学生で、いつも一人で図書館に来ていた。

線が細く中性的な雰囲気を持つ彼は、少女マンガから飛び出てきた人のように素敵に見えた。

私は一目見たときから彼が気になって仕方なかった。

でも、声を掛ける勇気なんて持っていない。

図書館内で見掛けると、本越しに彼を見つめ、彼がこちらを向く瞬間に顔を隠したりしていた。

ただ見ているだけでもときめいて、心臓が煩くなる。

誰かに話したいけれど、話す相手がいないと思っていたが、菜穂がいた。

小学校の時の「ナントカ君が好き」という軽いものではなく、こんな風に男の人を想うのは初めてで、修ちゃんと一緒の場所で息を吸えるだけでも嬉しいと思った。

それを菜穂は微笑みながら聞いてくれていた。


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