ゆえん


私は『Rai』や『You‐en』で働くようになって、今までとは違った穏やかな人種に囲まれるようになった気がする。

金と欲が絡み合う夜の街と、空気が澄んでいるように瞳が澄んでいる人々が集うこの店とでは、世界がまるで違うのだ。

優しい気持ちに触れるたびに、自分勝手だった今までの生き方を愚かに思う。

今度は自分で自分を認められなくなっていった。


私はこの十年何をしていたんだろう。

囚われ続けてきたことの小ささに自分で嫌気がさす。

それが原因で、冬真さんの人生に取り返しのつかないことをしていたと思うと、自分自身を呪わざるを得ない。

一人、アパートでそんなことを考えていると、自暴自棄になっていく。


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