ゆえん
二十分くらい経っただろうか。

ドアの空く音がして、キッチンで物音がし始めた。

私はベッドから体を起こし、マユを起こさないようにベッドから抜けて、キッチンへ向かった。


「おはようございます」


冬真さんの反応が怖かったが、いつも通りの挨拶をした。


「おはよう」


冬真さんもいつも通りの挨拶をして、コーヒーを作っている。

その後の会話が続かず、沈黙が流れ、私は居た堪れなくなって自分の寝室に戻った。

ドアの音で、マユが目覚めたのか、もぞもぞと動いている。


「ママ、ママ」


マユは起き上がる前にそう言って、ベッドの上で手を伸ばしていた。


「マユ、起きたの?」


傍まで言って、その手を握ってあげると、ギュッとマユが握り返してきた。


「おはよう」


マユは私の顔を見て、ほっとしたように笑う。


「リサだあ。おはよう」


マユは私に抱きついて、胸に顔を擦りつけた。
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