ゆえん


「どうして、話せなかったんですか?」


私はその理由が知りたくて、冬真さんに訊いた。

冬真さんは少し黙って、躊躇っているように見える。

その少しの沈黙が耐えられない。


「冬真さんは悪くないです。そんなことぐらいで謝られたら、私は冬真さんにどうすればいいですか? 私のせいで大事な家族が事故に遭ったのに」


私が冬真さんの家族のことを口にすることさえ、罪のように感じるのに。


「それも元はと言えば俺のせいになる。俺が修二たちを東京に送らなければ、あの事故だってなかった。しかもあの日、俺が沙世子に駅まで送ってもらわなければ、事故なんて起きなかった。沙世子と真湖は生きていたはずだし、理紗も罪の意識など感じずにいられたはず。全てにおいて、俺はタイミングが悪いのかもしれないな」

「そんなことを考えていたんですか」


私は無性に怒りたくなってきた。

どうしてそんな風に自分が全て悪いだなんて、冬真さんが思わなくてはならないのだろう。

冬真さんは何一つ、罪を犯していないのに。

また涙が零れてくる。

冬真さんが悪いなんて思ったことは無いのに、どうして一人でそんな風に抱えてしまうのだろう。


「冬真さんは馬鹿です。鈍感だわ」


私は冬真さんの首元に抱きついた。


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