ニコル
今時
 「どうだ。長瀬?」
 長瀬の肩を叩き、山口は進捗を確認した。
 「今の所、誰も電話に出ませんね。」
 首を大きく左右に振りながら、そう答えた。
 「しかし、あれですね。今の子供はほとんど携帯持っているんですね。僕らの時代では考えられないや。」
 若い長瀬でもそれだけの事を思うのだから、山口にとって目の前にあるリストの内容は信じられないものに映っていた。
 ―――ったく、最近のガキは何やってんだか・・・。
 今起きている事態が飲み込めない、そんな苛立ちからそんな事を思ってしまった。しかし、それは刑事が考えてはいけないことだ、そんな風に感じ両頬を手のひらで思い切り叩いた。
 「どうしたんですか?山口さん。突然・・・。」
 振り向いた長瀬の目はまん丸だった。
 「いや、何でもない。それより、何か動きがあったら教えろよ。」
 煙草の煙をくゆらせながら、パトカーの後部座席にドカンと腰を下ろした。
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