ニコル
 昨今の子供達に対する犯罪の多さから考えれば、“携帯を子供に持たす事”はしょうがない事なのかもしれない。でも、浩二は子供は子供らしくいてほしい、そんな想いから携帯を持ってくる事を浩二のクラスは禁止していた。
 「先生。これで時間わかるよ。」
 そう言って、差し出されたのはオレンジ色の子供らしい携帯だった。禁止されている携帯を持っている事と浩二が困っている事の間で、ハヤテの心は揺らぎ、気まずそうな態度をとっていたのだと浩二は悟った。
 そんなハヤテの自分を思う気持ちを、今は素直に受け取る事にした。
 「ありがとう。それで、今、何時だ?」
 二つ折りになっている携帯を広げて、液晶に映し出された時間を見ようとした。

 プルルル・・・、プルルル・・・。

 突然の呼び出し音に、思わずハヤテは携帯を投げてしまった。
 「うわぁ。」
 その声に周りにいた生徒も、思わず叫び声をあげた。
 クルクル回転しながら、部屋の隅にある鍋の下に携帯が潜り込んでしまった。
 
 何かが壊れる感じがした。
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