ニコル
 冷静になり考えた。この事は決して小さな一歩ではないと思えた。少し悩みつつも、長瀬は山口に報告に向かった。

 パトカーのガラスをかるく三回ノックした。それをきっかけにパワーウィンドウが、ほんの数センチだけ下がった。そこから横目で山口は長瀬を見た。
 「どうした?」
 「山口さん、電話が遂にかかりました。」
 長瀬のその言葉を聞くと、パワーウィンドウがさらにもう数センチ下がった。
 「本当か?詳しく教えろ。」
 山口のその表情に長瀬は達成感のようなものを感じた。少しだけ声が張った感じになった。
 「はいっ。電話がかかった生徒の名前は“大黒ハヤテ”君です。」
 山口の隣に座っていた真生が、その言葉に反応した。
 「“大黒ハヤテ”?その子は何年生ですか?」
 長瀬は自分の話を途中で止められたのが面白くなかった。だから、真生の話は無視してそのまま話を続けようとした。
 「あのね。お兄さんは今、仕事の話をしているんだよ。だから、ちょっと黙っていてくれるかな?それで続きですが・・・。」
 山口は真生の気持ちを代弁するかのように、同じ質問を長瀬にした。
 「それで、その生徒は何年生なんだ?」
 山口にそう言われたら、長瀬に断る術はなかった。
 「あ、はい。三年生です。」
 「三年生だそうだよ。何か心当たりがあるのかい?」
 山口がそう伝える前に、真生は次の質問をしてきた。
 「三年生?三年何組ですか?」
 また、同じように山口に言われたら敵わない、そう思い、今度は素直に真生の質問に答えた。
 「二組だよ。それがどうかしたのかな?」
 「二組は私のクラスなんですっ。」
 山口の膝に思わず手を置いて、思い切り身を乗り出した。そして、勢いよく真生は答えた。
 「ハヤテは無事なんですか?」
 その質問に、長瀬は少し沈黙し、どう答えるか思案した。
 「きっと無事だと思うよ。ただ、今は電話に出てくれないんだ・・・。」
 長瀬のその言葉に、真生は自分の携帯を取り出しボタンを素早く押した。
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