ニコル
 プルルル・・・、プルルル・・・。

 「うるさい。」
 そう言う香田の瞳からは黒目が消えていた。そんな香田を見て、浩二は後ろに手をつき、言葉を続けることが出来なくなった。
 「こ、香田さん・・・?」
 浩二は怖くなり、そのままの姿勢でハヤテの方へと後ずさりした。浩二はハヤテに囁いた。
 「ハヤテ。携帯は取れそうか?」
 ハヤテも浩二と同じように小さな声で答えた。
 「う~ん。あと少しで取れそうだけど・・・。」
 「早くした方が良いかもしれない・・・。何か嫌な予感がする。」
 「わかった。ちょっとだけ、待ってて。」
 ハヤテは手繰ったストラップを指に巻き付けた。
 「よしっ。」
 勢いよく手を引き抜くと同時に、着信音が給食準備室に大きく響いた。
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