ニコル
消えていく日常
 街は夕食の支度する母親や、家路を急ぐサラリーマン、塾帰りの小学生、みんなが明日を信じて疑っていなかった。
 「お母さん、ご飯まだ?」
 「ただいま。」
 「今日、塾で褒められたよ。」
 そんな当たり前の言葉が、みんなの心をほんわかとした気持ちにさせていた。暖かい気持ちがそれぞれの家に拡がっていた。

 そんな暖かい気持ちが一瞬にして凍りついた。いや、凍りつく事すら許してもらえなかった。声を出す間もなく、一軒、また、一軒と明かりが消えていった。全ての明かりが消えた時、金色の絨毯も一緒に消えていた。
< 150 / 155 >

この作品をシェア

pagetop