ニコル
止まらぬ震え
 一馬の歯は激しく音を立てていた。巧も同じように音を立てていた。ふたりの体も激しく震えていた。
 真生は巧の力が抜けた事を感じ取ると素早く振り解き身構えた。が、すぐにその構えを解いた。もう、ふたりが真生に襲いかかる事はないとすぐにわかったからだ。まるで捨てられた子犬のように、小刻みに震えているふたりの姿は、守ってあげたくなるほど弱々しくなっていた。
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