ニコル
逃げ場所
 「これからどうします?」
 さっきとは打って変わって、香田は神妙な面持ちで浩二に話しかけた。
 「そうですね。このまま、廊下にいてもしょうがないですからね。ただ、僕はこのまま校内にいるのは得策じゃないと思うんですよ。」
 「どうしてですか?」
 浩二は鼻の頭を掻きながら、考え事をする癖があった。鼻の頭を掻きながら、香田に話し始めた。
 「まず、あれ、あの生首みたいなのがなんだかわからない。今日、転校してきた生徒の顔に似ていますが、どうして似ているのかもわからない。わからないものには対応のしようがないと思うんです。」
 「それにさっき香田さんが行っていたことも気になるんですよ。生徒も先生達も誰もいないって。今までこんな事なかったですからね。」
 香田は黙って聞いていた。
 「とりあえず校外に出て、警察でも何でも応援を要請した方がいいと思うんです。僕らには何も力がない・・・。」
 “力がない”と言うその言葉に香田は反応した。
 「そうです。力がないです。私たちですらそんな感じなのに、こんなにたくさんの生徒達を連れて校外に逃げる事出来るでしょうか?いや、無理だ。だったら、校内のどこかに隠れて応援を待った方が生徒達にいいと思うのですが。」
 香田の言う事も最もだと、浩二は思った。確かに周りには何人もの生徒が廊下にしゃがみ込んでいた。そして、浩二も含め、皆、息もあがっていた。
 もう一度、軽く鼻を掻くと浩二は決心した。
 「そうですね。ここから一番近い所で、安全そうな所は・・・。」
 「給食準備室なんかいいんじゃないですか。あそこは防火対策の為に、他の教室と比べても丈夫に出来てますし・・・。」
 
 生徒達を立ち上がらせ、浩二達は給食準備室に向かう事にした。
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