ニコル
日常の一コマ
 救急車がものすごい勢いで街中を駆け抜けていった。
 この街ではこんな光景は見慣れたもので、街の誰も気にする事などなかった。近所の主婦と会話する老婦人、ウィスキーのボトルを片手に酒を飲んでいるもの、皆が皆、いつもの休日を満喫していた。
 救急車の中にいた父親も母親も、いつもの休日を満喫するつもりだった。いや、娘の誕生日を祝う為のいつもより特別な休日だった。それなのに、今、彼らは救急車に乗り、悲痛な面持ちをしていた。
 そんな彼らを乗せ病院へ向かっていた。
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