サマースキャンダル×× 〜Episode,00〜【短】
「からかうなよ」


苛立ちと悔しさから漏れたため息が、自分しかいない部屋の中に響いた。


『あら、心外ね。私はあんたの成長を喜んでるんだけど』

「だったら、いい加減に遥さんに会わせてくれてもいいだろ?」

『どうしよっかなー。あんた、私から見たらまだまだガキだし』


半ば諦めながらも食い下がってみたけれど、返ってきたのはやっぱりいつもと似たような言葉だった。


「またそれかよ……。結局取り合ってくれないなら、最初から期待させるような態度取るなよ」

『あんたこそ、いい加減に諦めれば?』

「それができるなら、とっくにそうしてるよ」

『本当、しつこいんだから』


呆れたようにため息を吐かれた直後、自分の中で膨らみ続けたフラストレーションがまるで風船が割れる瞬間のように大きな音を立てたような気がして……。


「……っ!あーっ、もう!しょうがないだろ!自分でも信じられないくらい好きなんだからっ!!」


考えるよりも早く、電話の向こうにいる有紀に大声で訴えていた。
直後、俺たちの間に沈黙が下りた。


それから冷静さを取り戻すまでに大した時間は掛からなくて、頭が冷えていくのを自覚しながら自分がなにを口にしたのかを理解し、顔が真っ赤になるのがわかった。


……うわー、まじかよ。
ありえねぇ……。


からかうのが大好きな姉を前に“好き”なんて言葉を遣って、無事でいられるはずがない。ばかにされて、きっと一生このネタで笑われ続けるに決まっている。


『…………遅すぎ』


自分の未来を悲観したくなった頃、有紀がぽつりと言った。
ただ、俺にはその意味がわからなくて、からかわれることを覚悟しながらも理由を尋ねようと口を開いた。

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