サマースキャンダル×× 〜Episode,00〜【短】
***


それから十年ほどの月日が経ち、有紀が結婚することになった。


がさつな姉の恋愛事情は意外にも順調だったようで、有紀は三年付き合った恋人と半年間の同棲を経てから婚約と入籍を済ませるという、文句のつけようもないようなゴールインを迎えた。

昔から有紀のことをじゃじゃ馬だと笑っていた祖父母が一番驚き、だけどそれ以上に喜んでいた。


義兄になる人は誠実そうな好青年で、初めて会った時は本当に有紀でいいのかと不安になったほどだったけれど、ふたりは俺なんかの心配を余所に愛を育んでいたようだ。


有紀とは大学に入るまではよく喧嘩もしたけれど、有紀が社会人になってからは自然とその回数も減っていき、今ではわりと仲がいい姉弟だと思う。
だから、男勝りな有紀が恋人の前ではいつも以上に幸せそうにしている姿を見て、姉を心配する弟としては安堵した。

もちろん、そんなことは絶対に口には出さないけれど。



そして迎えた、有紀の結婚式当日──。


両親とともに会場に着いた俺は、有紀の友人たちからお祝いの言葉を貰い、数人の招待客と談笑していた。
数年振りに会った人もいたけれど、相手は俺に対して昔と変わらない扱いをしてくることも多くて、子ども扱いをされている状況になんとも言えない気持ちになった。

もちろん、綺麗に着飾ったお姉さんたちにチヤホヤして貰えるというのは悪い気はしないけれど、社会人になった俺としては大人になったことを少しだけアピールしたくもなったのだ。


結局、式が始まるギリギリまで俺のことを特に可愛がってくれていた有紀の友人たちに捕まったまま過ごすことになり、ようやく母親や親戚のいるテーブルに辿り着いた時には少なからず疲労していた。

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