未熟女でも恋していいですか?
どーして!?

何で!?


恋人でもないのに…と言いたい。

でも、高島はすごく真剣な顔つきで見つめる。


吸い込まれそうな瞳のチカラに息を呑む。

これが生徒たちの言ってた目ヂカラ…というやつか。





「の…」


口を開いて声にした。

望みを叶えて欲しい…と願った子供のような気持ちで、名前を呼んでみた。



「の…ぞむ……」


「そう!ほら、もう一回!」


高島の声が煽る。



「の…望……望……」


何だか恥ずかしくなってきて押し黙った。


まずい。

頬にサ〜ッと寒気が走る。



「照れんなよ」


「照れてなんか…!」


反論の仕様がない。

今、確かに顔が熱い。




「擦れてねぇな。本当に」


鼻でせせら笑いながら高島が呟く。

カッカッ…と箸の音を立てながら食事する男に目を遣り、恥ずかしさと戦いながらご飯を済ませた。





「ご馳走さんっ!」


私が箸を置くのを待って言われた。

その何気ない思いやりを少しだけ好ましく思う。



「ごちそうさまでした…」


茶碗を流しに持って行こうと重ねた。


「いいよ、俺が洗ってやる」


この半年以上、誰かに茶碗を洗ってもらうようなことはなかった。

葬儀の間も法事でも、全部自分が洗ってきた。



「でも…」


擦れてないんじゃなくて、可愛くない私は反論しようと試みる。

けれど、聞くまでもなく、高島が流しに持って行ってしまった。


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