未熟女でも恋していいですか?
重たい過去が頭の中をすり抜ける。

忘れたくても忘れらないあの日のことを、誰にも話さずにきてしまった。



(お母さんにだけは、話した方が良かったのかな…)


心配をかけたくなくて内緒にしていた。

でも、もしかしたら母親の勘が働いて気づいていたかもしれない。



「……仙道さん?」


腕を揺らされビクつく。

目を見開いたまま振り向くと、音無さんは真顔で私の顔を覗き込んだ。



「大丈夫?何だか顔色が悪いわよ」


心配そうな表情で見つめられる。


「平気。どうもないから…」


チャペルの鐘の音が聞こえている。

どうやらそれを教えたかったみたいだ。



「もう始業か。早いわね…」


よっこらしょ…と、年寄りみたいな掛け声を出して立ち上がった。


「あと2校時の我慢よ!」


音無さんがそう言って励ます。


「そうね。頑張ろう!」


教室に向かって走り出す生徒に交じりながら、過去の記憶に蓋をする。


あれは絶対に忘れてはならない。

男を信用してはいけないと、私に教えてくれた教訓みたいな出来事だ。



(だから、あの人にも隙を見せないこと…)


家の中を修理しているであろう人のことを思い浮かべた。

彼が何者であろうと、気だけは許さずにいよう。



私は一人で生きる。


それ以外に幸せな道などない………。



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