なみだ雨



向かった先は翔太の職場。

制服を着た女の人の肩を掴んだ。


「翔太は…?」

「…はい?」

「新井翔太は!」

「…練?」


後ろから声が聞こえて、振り向くと、
メモ書きを差し出す。


水性ペンで書いたのか、所々、練の手汗で滲んでいる。


翔太は一通り読んで、ちょっと待っててと声をかけてどこかへ消える。


やっと静まった呼吸。
ロビーの端にある椅子に座る。


「来て」


翔太の声で顔を上げる。

行こう、と、翔太は練の手を掴んだ。




覆面パトカーの後部座席に乗せられて、
1時間ほど揺られる。

何かを探すようにゆっくりと走る覆面パトカーを
後ろのトラックが煽る。

「あれ〜この辺だったはず」

そんな呑気な声を上げながら運転してると響いてくるクラクション。

「はいはい、すみませんね」

と言いつつ窓から出したのは、赤色回転灯。


トラックは逃げるように次の交差点を左折した。


「いいの?」

「えっ?あ、多分まずい」


パトライトを出したことがまずいと言ったのか、そもそも許可なく覆面パトカーを出していいのか。


申し訳なさそうな練をルームミラーで確認する。



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