なみだ雨


わたし、そんなに変な顔してた?

常連さんはあたふたしながらとりあえず、
ハンカチを差し出した。

差し出されたハンカチを見て、初めて、
自分が泣いてたのだと気づいた。

「僕の家、入りますか?」



改めておじゃますると、
広くもなく、狭くもなく、
ちょうどいい広さだった。

「いまお茶いれます。ここ、どうぞ」

「ありがとうございます」

わざわざ置いてくれた座布団の上に座らせてもらう。

「さっき頂いたお菓子まだあるんです、食べますか?」

「わたしもまたもらってきたんです」

はるかはそう言って鞄の中から、
お饅頭を出した。

ふふふっと2人で微笑むと、
自分の食べたいものを手にした。

はるかはどら焼きで、
練はお饅頭。

なんとなく、2人で笑ってしまう。

「寒くないですか?」

「正直言うと、寒いです。でも、大丈夫です」

お茶とても温かいです、と最後に付け足した。


「わたしの家にも、このくらいの大きさのちゃぶ台がありました」

ちゃぶ台を撫でながら、はるかは言った。

「"ありました"?」

なんとなく引っかかった。
壊れたのかもしれない、
誰かにあげたのかもしれない。

でもほかになにか意味があるように聞こえた。


はるかは、すこしの間、黙り込んだ。

そして、口を開いた時にはもう、
話題は変わっていた。


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