なみだ雨
風呂場を開けて、動きが止まる。
電気をつけようかとも思ったが、
薄暗い部屋を探していたおかげで
暗闇に目が慣れている。
バスタブの中に、はるかはいた。
下着しか身につけていない状態で
ぐったりしてはいるが意識あるみたいだ。
はるかは薄く目を開いて、
「あ…」
と絞り出すようなやっとな声で呟く。
練は上着を脱いではるかに被せる。
横抱きにして持ち上げたとき、
はるかと一気に距離が
縮まった時のことを思いだした。
あの時も今のようにずぶ濡れで、
しゃがみこんでいたんだ。
あの時はこんなに軽くなかった。
肩も腕も足もこんなに細くなかった。
胸の奥が
ぎゅっと掴まれるような痛みが走る。
転ばないように、
落とさないようにと下を見て歩いていた。
「練!」
咄嗟に顔を上げると、
翔太が立っている。
後ろには2,3人の警官。
すぐに
自分がしてしまったことに気がついた。
「…はるかちゃん」
翔太は青白いはるかの顔を見て切なそうに名前を呼ぶ。
どこからか救急車のサイレンが聞こえた。
はるかの意識はいつの間にか失っていた。