その瞳をこっちに向けて
さっきまで勢いよく振っていた雨が小雨へと変わり、雨の滴がゆっくりと下へと落ちていく。
きっともうすぐ、雨はあがる。
「雨があがったら一緒に来て欲しい所があるんですよ」
「お、俺に?」
「中畑先輩以外に誰が居るっつーんですか!」
目の前に中畑先輩しかいないのに、首を傾げるその姿に唇を尖らせて突っ込むと、「あー、だな」と照れ臭そうに人差し指で頬を掻く中畑先輩。
そして、わざとらしくゴホンッ…と咳をしたと思ったら口を開いた。
「えとさ、……元から送ってくつもりだったけど」
「送る?」
中畑先輩の言った意味が全く分からずに今度は私が首を傾げると、少しムッとした様に中畑先輩の眉間に皺が寄る。
「だから、……工藤の家までだよ!」
ああ。送るって、家まで送るって意味だったんだ。
もう仁先輩の事は諦めたって言ったのに、まだ仁先輩の後をつけると思われてるわけだ。
中畑先輩って、…………ほんとしつこい。