その瞳をこっちに向けて


ーーーーー


「うっわー!星、綺麗ですね」

「雨雲が流れたんだな」


 雨上がりの空は雲が殆どなく、まるで真っ黒なキャンバスにキラキラと輝く宝石を描き込んだ様にみえる。


思っていた通り、あの後暫くしたら雨が止んだ。ただ予想と少し違ったのは、雨が上がるのに少しだけ時間がかかったって事だ。


 現在の時刻は7時半。乾燥機で乾かしてもらった自分の服にもう一度着替え外に出た時には、空の色は黒へと移り変わっていた。


「なんかこれだけで、今日はいい日だったって思っちゃいます」


空を見上げたままそう言うと、真横に居る中畑先輩からフッという笑い声と共に「単純」という言葉が降ってくる。


またバカにされた?


と思った瞬間、中畑先輩が私の方へと顔を向けてニヤッと笑った。


「まあ。俺は、お前に会った時から今日はいい日だったけど」

「えっ?あの時、何か美味しいものでも食べた帰りだったんですか?羨ましい」


甘いもの好きの中畑先輩の事だから、きっとケーキとかアイスとかだと思う。

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