その瞳をこっちに向けて


 中畑先輩が美味しそうにフォークに刺したケーキを口に運ぶ映像が頭を過ると同時に、その頭の中で思い浮かべただけのケーキの甘さを感じようとつい自分の口へと指を運んだ。


その時、パチンッという音と共におでこに僅かな痛みが走る。


「違うっつーの。バーカ」


どうやら中畑先輩のでこぴんを喰らったらしい。


「違うんですか?じゃあ、どういう意味ですか?」


おでこを擦りながらそう訊くと、中畑先輩の唇の前にスッと人差し指がたてられる。


「内緒」


妖艶な笑みでそう呟いた中畑先輩が余りにも色気を纏っていて。


「なっ…」


悔しいかな、それ以上声が出なくなってしまう。そんな私を見て満足そうにニヤッと笑う中畑先輩。



本当に中畑先輩っていう人はムカつく位、人をドキドキさせるのが上手い人だ。

それは中畑先輩のファンじゃない私でも断言出来る。のが、また悔しいんだけど。


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