その瞳をこっちに向けて
でもそんな呆然としている私なんかお構い無しに、中畑先輩が更にこっちへ来いと私を手招きする。
「早くしろ!行くぞ!」
行くって?
何処に??
わけが分からないながらも、そんな疑問が頭を占め首を傾げると、目を丸くした鈴菜が私へとグイッと顔を近付けた。
「王子様と何か約束してたわけ!?」
「し、してないし!」
約束なんてしてない。絶対にしてない筈。
そう断言しながらぶんぶんと首を横に振った所で、再び中畑先輩が私の名前を呼ぶ。
「工藤!」
さっきよりも少しだけ苛立ちを含んだ様なその声音。それに思わずビクッと肩を揺らすと反射的に「は、はい」と声を上げて席を立つ。そのままの勢いで、そそくさと中畑先輩の前まで足早に向かった。
目の前にやって来た私を見てさっきの苛立った顔から一変、満足そうな顔をする中畑先輩。
そんなわけの分からない中畑先輩に、さっきから頭の中を占めている疑問を投げ掛けた。
「えと。ど、どうしたんですか?っていうか、何用ですか?」
「お前、図書室行くんだろ。一緒に行ってやろうと思って」
「…………」