その瞳をこっちに向けて


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 中畑先輩と並んで歩く帰り道。真っ昼間に比べれば涼しいかもしれないが、未だに暑い気温に首筋から汗が流れた。


「あっついですね」

「9月っていっても、気温はまだ30度越えしてるからな」

「ですよね」


そう言いながらため息を吐くと、中畑先輩のクスッという笑い声が聞こえてくる。


 帰る方向は逆なのに、一緒に帰るというのは不思議な感じだ。しかも、何で一緒に帰ってるのか全く分からないっていう。


ただ、こうやって中畑先輩の隣を歩くのは嫌じゃない。安心する。


何だかんだで、私が落ち込んでいる時に隣に居てくれたのが中畑先輩だったからそう思うのかもしれない。


「気温はまだ夏なのに、もう夏休みじゃないんですよね。私、今年の夏は酷い位夏らしい事しなかったです」

「夏らしい事?」

「海に行ったり、浴衣を着て花火とか見たかったなぁってやつです。まっ、浴衣も持ってないんですけどね」


 やった事といえば、家でごろごろして漫画を読んでた位だったな…と思い出していると、中畑先輩も思い出した様に口を開いた。

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