その瞳をこっちに向けて



心臓が煩い。

今にも爆発しそう。

ほんと、……中畑先輩の顔、見てるだけで倒れそうなくらいドキドキする。



 中畑先輩の顔を見ただけでをこれなのだがら、話すのなんてもってのほか。なのだが、強引に引っ張られてどんどん中畑先輩のいるドアへと近付いているっていう。


「ちょっ、ちょっ、ちょっと鈴菜さん!」


私の叫びも虚しく、あっさりと中畑先輩の前に連れてこられてしまい、渋々中畑先輩へと顔を向けた。


「どうした?」

「…………」


明らかに普段と違う態度を心配してそう訊かれたその言葉に、なんと言葉を返したらいいのか分からない。


 中畑先輩が好き過ぎて心臓がもたないんです。なんて言えるわけない。それを分かっているからこそ言葉に詰まる。



どうしよう?

心臓が煩さ過ぎて、誤魔化しの言葉一つ思い付かない。

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