その瞳をこっちに向けて
中畑先輩はひたすら私が仁先輩のストーカーをしていると思っている節がある。
実際、何度そう言われて家まで付いて来られたか。
だが私の疑う様な視線に、何故か中畑先輩が盛大なため息を吐いた。
「ちっげーよ。彼女を家まで送るのは当たり前だろ」
その言葉にドクンッと跳ね上がる心臓。
ああ。そっか。……そうなんだ。
「彼女……。彼女。うん。彼女」
噛み締める様にそう何度も呟くと、徐々に『彼女』になったのだという実感が湧いてくる。
「ほら」
さっきまで普通に繋いでいた筈の手の指が中畑先輩の指と絡まりあう。
その事に笑みが溢れた。
「彼女なんで送られてあげます」
「バーカ」
並んで二人で歩く道。
暗くなった空にぽつぽつと輝き出す星。
来た時とは違う景色。そして、来た時とは違う私の気分。
帰りの今の気分は、
ーーーーすこぶる幸せだ。