その瞳をこっちに向けて
「そ、そそそそういうこと、さらっと言わないで下さい!」
「ダメ?」
動揺している私を見て楽しんでいる様に笑う中畑先輩のその言葉は絶大で。中畑先輩に夢中な私がその言葉を受け入れないなんて選択を出来る筈もないわけで。
「ダメ……ではないです」
狡い。狡い。狡い。
なのに、私の返事に嬉しそうに微笑まれて「サンキュ」って言われるだけで、胸がキューっと締め付けられる。
それに舞い上がって席を立ち、中畑先輩が好きそうな本を探しに行く私はもう末期だと思う。
私の持てる知識を総動員して本を選んだその後は、また中畑先輩と二人並んで本を読む。
チラッと私の選んだ本を読む中畑先輩を横目で盗み見ると、思っていた以上に真剣に本を読んでいる姿にほっとため息を吐いた。
本選び、的外れとかじゃなくてよかった。
そう思うと、再び自分の本の中の文字へと目を戻す。
それから数分経った時。
「なあ、工藤」
「はい?」
不意に中畑先輩に名前を呼ばれ、そっちへと顔を向けると共に、ふわっと頬に伝わる温もりに目を見開く。