その瞳をこっちに向けて
その事に、ふうっと諦めに似た息を吐くと、鈴菜から少し視線を逸らして口を開いた。
「仁先輩の家までこっそり後をつけました」
「ストーカー!!引くわ!」
私の言葉にそう言って、後ろに一歩足を下げ私から距離をおく鈴菜は結構酷い。
親友の筈なのに。
「違うから!中畑先輩と同じ事言わないでよ!」
「いや、ストーカーだから。っていうか、中畑先輩にも同じ事言われたって何で?」
思わず突っ込んでしまったのが仇となった。
グッと口をつぐむ私に、何で?何で?と嫌な笑みを浮かべて連呼する鈴菜。その追究はやっぱり止むことはなくて、再び重い口を開く。
「それは、……後をつけてるのが中畑先輩にバレてまして……」
「…………ああ、それで」
蔑む目の後で、何かに納得した様な鈴菜の言葉。
「何が『それで』なの!?」
「仁先輩に麻希の害が及ばない様にガードしてるんでしょ」
鈴菜の口から紡がれる、何で中畑先輩がこんな意地悪するようになったのか?という理由に納得せざるを得ない。
だって、中畑先輩は仁先輩の親友なのだから。