その瞳をこっちに向けて


「分かんないかなぁ。たまに見せる笑顔がいいんだよ!後、本を真剣に読んでる表情も好き!いや、全部好き!」

「ふーん。全く分かんないわ」


私の力説は鈴菜には全く伝わらないらしい。


その事に唇を尖らせ、

「仁先輩は、……優しいんだよ」

そう呟く。


それを聞き逃さないのが流石鈴菜というところだろう。


「中畑先輩の方が優しいって思うのは私だけ?」


ニヤニヤしながらそう言う鈴菜。


「もう!仁先輩も優しいのっ!」

「はいはい」


私の反論を聞いてケラケラ笑っている鈴菜は、確実に私の反応を楽しんでいるんだと思う。



私が鈴菜に口で勝つ日は、一生来ない…んだろうな。

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