その瞳をこっちに向けて


「この学校の王子様は中畑祐(ナカハタ タスク)先輩。この学校で平和に過ごしたいんなら覚えておきなさいよ!ほんと、仁先輩しか見えてないんだから」

「はーい」


鈴菜の忠告に一応返事をしたが、そんな私の適当さが伝わったのか、「ほんとに分かってんだか」なんて漏れたお小言に再び苦笑した。


そんな私のおでこを鈴菜のスラッと長い人差し指がピンッと弾く。


「何でデコピン?」


突然の事におでこを擦りながら答えを求めるも、鈴菜はその事はスルーらしい。


そして、

「それにしても、何であんな無表情がいいんだか」

そうポツリと漏らした。


 基本無表情の仁先輩。登校時も廊下を歩く時も下校時も、兎に角ほとんどの時間を本を読むのに割いている。


だからか、仁先輩と仲が良いのは幼馴染みらしい王子様こと中畑先輩だけ。


毎日見続けてる私がそう言うんだから間違いない。


でも、毎日見続けているからこそ見えてくる部分もあるのだ。

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