イジワルな初恋
free man's
二十三時。ポストから取り出した郵便物をベッドの上へ放り投げ、そのままバスルームへ向かった。

「あ~疲れた~」

シャワーの音でかき消されるのが分かっていたから、少し大きめの声でつぶやく。

「店長のあの嫌味、どうにかなんないのかな……」

唯一周りを気にせず愚痴をこぼせるこの場所が、ストレス発散の手助けをしてくれてる。


ワンルームでひとり暮らしをしている私、岩崎梨々香(いわさきりりか)は、短大を出て、関東を中心にファッション雑貨関係の専門店の開発運営を行っている会社に入社し、今年で五年目の二十五歳。


お辞儀の仕方や言葉遣い、商品の包装などあらゆる研修を経て、希望通り化粧品や美容グッズなどを扱う専門店へ配属された。

けれど、商品のことはもちろん、女性の美に関する知識も身に付いてきた頃に出た人事異動。

正直もう少しこの店でがんばりたいと思っていたけど、この仕事に異動はつきもの。むしろ同じ店に五年以上いることの方が珍しいのかもしれない。


< 2 / 85 >

この作品をシェア

pagetop